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2019年8月 7日 (水)

1週間で進化の系統を再現する「胎児の世界」が示す人間の可能性②

1週間で進化の系統を再現する「胎児の世界」が示す人間の可能性
リンク)より転載

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(その1のつづき)

●運動論・身体論からのアプローチ
脳だけではなく、それを含む我々のからだそのものが魚類→両生類→爬虫類→哺乳類という系統発生の進化史を抱え込んでいる訳だが、それを自覚的に遡ることでヒトの運動能力は極限まで開発することが可能であるとするのが、高岡英夫『究極の身体』(講談社α文庫、09年刊)である。序章「人間の身体はどこまで高められるのか?」の要旨はこうである。


人類は単細胞動物からずっと進化を繰り返し、今日の姿に至ったわけだが、その進化のルート上で経験したものは、その重要なものについてはすべて人間のDNAの中に保存されていると考えられている。そして私は、人間の「身体能力」というものも、構造上の制約があるためすべてではないにせよ、人類の祖先たちが経験した多くのものを内包していると考えている。


人類は最終的に「人間という形態」としての新しいDNAを持つに至った。その新しく持った人間らしい構造と機能によって、人間は広い意味での「身体文化」を創造してきた。たとえば日本舞踊やクラシックバレエは、安定的かつ直立的に屹立できるという人間のみが持っている能力がなければ成り立たないし、テニスも手がラケットを握ることができなければできない。同じようなことが、料理にも裁縫にも陶芸にも建築にも、他の一切の「文化」にも当てはまる。そういった「文化」というものは、人間の段階になって初めてできあがったもので、もっとも人間らしい運動機能によって生み出されたものなのだ。


そして「文化」は広がり、「高度化」していく。この文化の高度化というものは、個人の段階で見ると「上達」という言葉で表現できると思う。「上達」はある段階までは人間らしい身体構造・機能によって担われる。しかし、そこからさらに上の段階になると、人体の中に温存されてきた過去の遺産、つまり魚類や四足動物から伝承されてきたDNA情報や身体構造、あるいは潜在的な機能というものを、進化の流れとは逆に、発掘し直していく作業が必要になるのだ。


「四足動物」からさらにさかのぼって、爬虫類、さらにはその先の魚類の構造・機能まで開発すれば、不世出と呼ばれるような選手になれるはずだ……。

内なる自然への回帰である。「人間は、自然のうちで最も弱い1本の葦すぎない。しかしそれは考える葦である」とパスカルが言ったのはとんでもない間違いで、内なる動物性を捨て去って最も弱い葦に成り下がったこと自体を問題視せずに、それを論理的思考能力の優位性でカバーできると思い込んだのである。

新哺乳類的な理性脳である大脳新皮質の言語機能や論理的思考は確かに人間が人間であることの証ではあるけれども、それにばかり頼って、実はそれが爬虫類的な反射脳や前期哺乳類的な情動脳と連動することで初めて成り立っていることを忘れてしまうと問題が発生する。
脳だけではなく身体の全体も同じで、二本足歩行は間違いなく人間であることの証であるが、それによって四足歩行や爬虫類や魚類の時代に持っていた背骨のうねりによる優れた運動の能力を失ったことに気づかないと、本来持ち合わせているはずの力を発揮できない。

 

 

 

紀伊谷高那

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