« 深海生物「チューブワーム」は、動物なのに物を食べない | トップページ | メスだけで子孫を残せる生物は短命 »

2019年8月 4日 (日)

中心体の起源は原生生物(スピロヘータ)との共生か

真核細胞の起源について、マーギュリスは、「繊毛、精子の尾、感覚突起、そのほか数多くの真核細胞の付属物が、嫌気性菌と遊走性細菌との融合から生じた。」との視点に立つ。

>中心小体/キネトソームになった外来者には、いまも自由生活をしている親戚がいる。古細菌の一種、スピロヘータである。スピロヘー夕の祖先であるくねくね動く乱暴者たちは、空腹のあまり死にものぐるいで多くの古細菌につっこんでいった。侵入された古細菌のなかには、今日のサーモプラズマに似たものもあった。侵入のあとに停戦がきた。私はスピロヘータと古細菌が合体した状態で生き残り、最古の真核細胞が生まれたのだと思う。
(『共生生命体の30億年』)
 > そこで何が起こったか。つねに乾燥や食物不足や有害物などの潜在的な災難にさらされている外に比べれば、細胞内環境は水分と栄養分に恵まれたところだ。古細菌の細胞膜という障壁を突き破ったスピロヘータ(あるいはそのほかの遊泳性の細菌)は、常にエネルギーと食物を享受できることになった。
 > 襲撃したものとされたものの増殖のしかたはしだいに関連してきた。生息の拠点となる元の細胞を制圧してしまったのでは、襲撃者も長くは生き延びられない。襲撃者は共生体となり、時の経過とともにオルガネラとなったのである。合体のあと新しい生き残りの策略が生まれたのだ。
 > 私は、くねくねと動く酸素に弱い細菌が食物を求めて古細菌を襲い、侵入していった場面を心に描く。動く細菌にすみつかれた古細菌は、そのおかげで速く動けるようになった。真核細胞は、「染色体のダンス」と呼ばれる有糸分裂をするが、これこそスピロヘータのたえまない動きに由来する。
中心体の起源が運動能力の高いスピロヘータの波動毛のモーターとして始まったが、体内共生後、それは有糸分裂における染色体をうごかすモーターとなったという訳だ。

マーギュリスは、最初はスピロヘータが古細菌に付着するための構造をつくったのだが、その付着部が、スピロヘータと古細菌の「共生発生的な統合の結果、今日の中心小体/キネトソームになったのだ」、と捉えている。また エネギュイとレンホセックは、動物細胞の中心小体とキネトソームか同じものであることに気づき、有糸分裂のあと中心体が極から移勣してキネトソームになるという考えを提示した。この説は彼らの死後に、電子顕微鏡の所見によって証明された
※キネソトーム(基底小体) 鞭毛、繊毛の基部にある粒状の構造。 周囲は9組の3連続小管で構成され、その構造は中心小体と相同。

マーギュリスは、性における中心体の役割についても言及する。
>中心体=キネトソーム小器官の起源がバクテリアにあることを示す興味ある証拠がある。この細胞内構造には、DNAとRNAの両方が見られるのである。
 >動物の細胞は、キネトソームをつくる(中心体から波動毛をつくる)か、それとも有糸分裂をすることができるが、両方はできない。・・しかし、動物はこの遺伝のジレンマへの答えを見つけたように見える。コロニーに固まって集まることによって、いわばケーキを持ちながら食べることもできるのである。細胞は「九(二)+二」小器官をつくった後は分裂できないという制約をコロニーをつくることで乗り越えた。大多数の細胞は分裂する選択肢を残していたが、少数の細胞は・・波動毛を持つようになった。

六億年たっても、動物が生殖する方法は、原生生物が交尾してあらたに原生生物をつくるやり方といっしょである。動物は目に見える生物や意識などの新たな次元を生み出すが、最後には性を通じて太古の単細胞の微生物状態に戻る。
精子とは原生生物そのものだった。体内に取り込まれたスピロヘータは、有糸分裂のモーターとして多細胞化を推し進めたが、同時に波動毛付きの原生生物から生物史をやり直すという減数分裂の仕組みをも併用した。しかもDNAよりも柔軟性に富んだRNAを持つ原生生物の状態に帰ることで変異性を生み出そうとしているのではないだろうか。安定化したDNAの前に可変性の高いRNAワールドがあり、原生生物はたぶんにこのRNAワールドの影響下にあったと考えられる。つまり、有性生殖とは、一旦原生生物に戻ることで原生生物のサバイバル能力を活用しようとした結果であり、それが私たちに受け継がれているのではないか。

 

 

 

北村浩司

« 深海生物「チューブワーム」は、動物なのに物を食べない | トップページ | メスだけで子孫を残せる生物は短命 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 深海生物「チューブワーム」は、動物なのに物を食べない | トップページ | メスだけで子孫を残せる生物は短命 »

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ お勧めサイトランキングへ
2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カウンター

最近のトラックバック

無料ブログはココログ