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2019年9月12日 (木)

性別による行動の違いを生み出す脳内物質のはたらきを発見 ドーパミンが性別による行動の差を生み出す

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東京大学大学院総合文化研究科の原田一貴助教と坪井貴司教授は、埼玉医科大学の周防諭講師らの研究グループと帯広畜産大学の姜興起教授と共同でドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が性別による行動の違いを生み出すことを線虫の解析から明らかにしました。オスとメスで脳内物質のはたらきが、どのように異なっているのかは不明な点が多く、本研究は脳機能の性差の解明に寄与することが期待されます。

動物のオスとメスでは、行動の違いが見られます。行動の性差は子孫を残すために重要ですが、その違いを生み出す脳機能の違いはまだ不明な点が多いのが現状です。土壌に生息する体長1mm程度の生物である線虫は、脳内の神経細胞が非常に少なくて解析しやすいので、脳機能の基本的な仕組みを研究するのによく用いられます。この線虫には、精子と卵子の両方を作る雌雄同体と、精子だけを作るオスの二つの性があります。雌雄同体は単独でも子供を産めますが、オスは子供を残すためには雌雄同体と交尾する必要があります。今回の研究では、オスと雌雄同体の行動の違いを調べました。

まず、行動解析により、雌雄同体よりもオスの方が運動量が多いことを明らかにしました。オスは交配相手を探すために動きまわる必要があり、雌雄同体はその必要がないので、この違いはそれぞれの状況に合っています。ドーパミンは哺乳類では感情・意欲・運動・薬物依存などに関わる神経伝達物質で、線虫も持っています。ドーパミンを作れない変異体の線虫ではオスの運動量が減り、雌雄同体の運動量が増えており、運動量の性差が小さくなっていました。これは、ドーパミンが運動量の性差を生み出していることを意味しています。さらに、オスでは、ドーパミンによる制御にはオスだけが持っている神経細胞が働いていることを明らかにしました。雌雄同体での制御では、オスと雌雄同体両方に存在するSIAと呼ばれる神経細胞がはたらいていました。神経活動を記録したところ、オスではこの神経細胞の反応性が悪くなっていました。この結果により、オスと雌雄同体でドーパミンは異なったはたらきをすることで、逆方向に運動量を制御しており、その結果、行動の性差が生み出されることが明らかになりました。

動物のオスとメスには行動の違いがありますが、その根底にある脳機能の性差は未知な点が多いままです。本研究は、一つの脳内物質が性別により異なった作用を持つことで、繁殖に重要な行動の違いを生み出すことを明らかにし、脳機能の性差の一端を明らかにしています。脳のはたらきの性差を理解することにより、精神疾患やその治療薬の作用の男女差の理解につながることが期待されます。

「行動の性差を生み出す神経の活動をダイナミックにとらえることができ、苦労も多かったですがワクワクする発見の連続でした」と原田助教は語ります。「数千匹の行動解析は大変でしたが、興味深いドーパミンの働きの性差を焙り出すことができ、その甲斐がありました」と共同研究者の埼玉医科大学の周防講師は語ります。一方、坪井教授は、「原田助教の非常に丁寧かつ高度な神経活動計測、そして周防講師の研究グループらが新たに開発した行動解析装置とそれを用いた非常に緻密な分析によって今回の研究が可能になりました」と評価しています。「今後は、ドーパミンだけでなくどのドーパミン受容体によって行動の性差が生み出されるのか、またドーパミン以外の神経伝達物質によっても行動の性差が生み出されるのかといった疑問を掘り下げていきたい」と坪井教授は将来の展望を語ります。

 

 

 

 

長曾我部幸隆

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