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2019年11月 5日 (火)

最強者サメはなぜ生き延びたのか~強者だからではなく、弱者の特性を取り込んでいるから

海の生態系の頂点に立つサメ。エディアカラ紀の4億5千年前に登場し、現在まで生き延びている。確かに海の生態系の頂点に居たとは言え、その後何度もの生物界の大絶滅を乗り越えて生存し、その基本的機能が今日まで大きく進化せずに続いているのは、何らかの特徴を備えているはずだ。

という事で最近見たサイエンス雑誌の中にその要因が書かれていた。

「シャチにはサメも怖気づく」
モントレーベイ水族館のシニア・リサーチ・サイエンティスト・ヨルゲンセンはカリフォルニアの沿岸のホオジロザメを15年以上調べてきた。
彼のチームは、サンフランシスコ西側の島によくやってきてゾウアザラシを捕食するホオジロザメ165匹に追求タグを付けた。だが、ある年の秋、奇妙な事が起こった。「2009年ファラロン諸島の近くを泳ぎ回っていた17匹のタグ付きホオジロザメが急に立ち去った。1匹や2匹ではなく17匹全てがものの数時間で」とヨルゲンセンは回想する。
「通常、サメは数週間から数ヶ月にわたって同じ海域にとどまる」なのに、なぜ消え失せたのか?それはホオジロザメは一般に海で最も恐ろしい捕食動物と考えられているが、彼らにも恐ろしいものがあるらしい。シャチだ。ヨルゲンセンはこの結果を、タグ付きサメの追跡結果とファラロン諸島南東部における30年近い野生生物個体数の調査結果を組み合わせた最近の研究から導き出した。ホオジロザメはシャチが近づくと、単にシャチが数時間通りかかっただけでも、この主要な餌場を放棄しているようだった。そして1日や2日だけでなく、シーズンを通じてその餌場に近づかない。ホオジロザメがおびえて離れた年には捕食されるゾウアザラシの数が1/4から1/7に減っていた。

サメは少なくとも4億5千万年前からいるが、クジラ目(クジラやイルカの仲間)が現われたのはたかだか5千万年前だ。「サメが海でこれほど長く生き残っているのは様々な策を身につけているからだ」とヨルゲンセンは言う。」「そのひとつが、諦めて降参すべき時期を心得ていることだ。」特に彼が驚いたのは、サメが安心して戻ってくるまでにほぼ丸一年かかった場合もあることだ。シャチはサケなどの魚しか食べないものと、キキャク類(アザラシやセイウチを含むグループ)を好むもの、そしてサメを食べるタイプがある。1997年にファラロン諸島で少なくとも1頭のシャチが生体のホオジロザメを殺して食べているのが観察されている。
サメがシャチに捕食される恐怖からシャチを避けているのか、獲物とするアザラシをめぐる競合を避けているのかはわからない。いずれにせよ、この極端な警戒行動はホオジロザメにとって賢明な生存戦略なのだろう。

サメがシャチを検知する方法ははっきりしていない。ファラロン諸島周辺の海水は濁っているが、ホオジロザメはまだ遠くにいても見聞きできない場合であっても、その場から逃げている。最も妥当と思われる説明としてこのサメは「水中で警戒すべき匂いをかぎ分けている。」と考えられるとヨルゲンセンはいう。シャチそのものの匂いか、シャチに追われるストレスを受けた他のサメが発した化学物質を嗅ぎ分けられるのだろう。

日経サイエンス10月号より抜粋
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このように数億年を超えて生きてきた種は単に捕食者としての強さだけでなく、飛び外れた警戒心を備えているのだろう。そういう意味で強者でもあり、弱者の性質も取り込んでいる。だから生き延びる事ができた。
危機アンテナの信号をどう強化するか、生物の基本構造だと思われる。

 

 

田野健

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