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2019年11月 4日 (月)

脳が先か,眼が先か,あるいは他の感覚器官が先か

脳が先か、感覚器官が先か。
そんなの、脳があるから感覚があるに決まっている。
そう思っていたが、この記事を読んで驚いた。

田中源吾氏の「光スイッチ説」とカンブリア紀の大進化リンク

より一部抜粋する

******

脳が先か,眼が先か,あるいは他の感覚器官が先か
例えば脊椎動物の発生を例に考えてみよう.眼は脳が
外転して発生する.つまり,脳の一部であるので,眼よ
り先に脳が進化したと考えるのが一見妥当である(Riyahi
and
Shimeld,
2007).このことは,詳細な視覚処理は眼
ではなく脳の中で起こっている(我々は実際,脳でもの
を見ている)と考えれば,しごく当然の事のようにも思
える.しかし,筆者は眼が脳より先に進化したと考えて
いる.感覚器は情報を収集し,脳はコンピュターのよう
に情報処理を行う.もし情報が入ってこなければ,脳の
ような精密な情報処理装置は必要ないだろう.より多く
の情報が眼や他の感覚器官によって入力されるにつれ,
脳はこの情報を処理するように進化し,そして筋肉のよ
うなエフェクター器官にそれを伝達する役割を発達させ
たのではないか.眼が最初に進化したという考えは,以
下に述べるように精巧な眼があるにもかかわらず,脳を
持たないハコクラゲ(Tripedalia
)がいるという事実か
らも裏付けられる.その眼は触手の付け根にあり,光刺
激に対する反応を脳による処理なしに筋肉に直接伝えて
いる.もちろん,ハコクラゲが進化の過程で脳を失った
可能性は排除できない.しかし,光のある環境に生き続
ける浮遊性の遠洋生物が,その進化の過程で脳を失った
と考えるのは不自然である.この考えは最近のハコクラ
ゲの形態学的研究および行動学的研究や分子系統学的研
究によっても支持される(Nordström
et al., 2003; Nilsson
et al., 2005; Garm et al., 2008, 2011; Bentlage et
al.,
2010).さらに,Vopalensky and
Kozmik(2009)は,主
な動物門の系統樹上に,光受容細胞の形成に関与するロ
ドプシンのタンパク質(オプシン)の形質状態配置を復
元し,オプシンがすでにクラゲ(刺胞動物)を含めた主
な動物門の共通祖先の原始光受容細胞に備わっていたこ
とを示した(図12).
Plotnick
et
al.(2010)は,中国のチェンジャン動物群
の左右相称動物に化石記録上最古の眼と触角が見られる
ことから,感覚器の刷新がカンブリア紀の生物大進化の
引き金になったと考えている(彼らはこの出来事を「カ
ンブリア紀の情報革命」と呼んでいる).他の感覚器官が
先カンブリア時代に刺胞動物などですでに発達していた
ことは,Parker(2003)で既に述べられている.Parker
(2011)は,他の感覚器官が,カンブリア紀の生物大進
化の前の先カンブリア時代に徐々に進化したことを主張
している.さて,眼の転写因子をエンコードするPax6
は,プラナリアからヒトまで,これまで調べられた全て
の左右相称動物で見つかっている(Gehring,
2005).線
虫(C. elegans )は地下の生活で眼を失っているが,Pax6
遺伝子を保持している.その理由は,Pax6
遺伝子の多面
的な機能にある.例えば,Pax6 遺伝子は眼だけでなく鼻
や脳の一部の形成にも関わっている.また,C.
elegans,
イカ(Loligo),海坊主(Phallusia),ランセット(Amphioxus)
のPax6
遺伝子が,ショウジョウバエにおいて転移眼を誘
導する能力があることも示されている.このように最近
の発生遺伝学的成果は,眼のみならず他の感覚器を発生
させるPax6
遺伝子が,先カンブリア時代にはすでに存在
していたことを示唆している.このことは,Parker(2003)
の「先カンブリア時代のうねりのなかで,眼を除く他の
感覚器官が,徐々に発達してきた」という説明と整合的
である[一方,Nilsson(2009)は,カメラ眼や複眼のよ
うな高解像度で空間を見ることができる眼は,単なる光
受容器から,段階的にとは言っても,40万年という地質
学的に見れば短い時間(Nilsson
and Pelger,
1994)で進
化してきたと考えている].しかしParker(2003)です
でに述べられているように,触覚や嗅覚では,体を動か
さない限り一方向からの情報しか手に入らないが,眼は,
遠くのものまで広い領域の様子を瞬時に捕えることがで
きるので,最も有効な感覚器官であったと考えられる.
このように考えると,Plotnick
et al.(2010)の「カンブ
リア紀の情報革命」は,「光スイッチ説」の拡張にすぎな
いともいえる.しかし一方で,Plotnick et
al.(2010)は,
チェンジャン動物群の体サイズと生物の持つエネルギー
量が,先カンブリア時代からカンブリア紀初めのSFFを
初めとした化石群とは大きく異なっていることに着目し
ており,この点は眼の誕生時期を考察するうえで興味深
い.

 

 

 

 

久里亜

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