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2019年12月25日 (水)

「男と女」生殖器は形成過程の駆動物質により、そのときの可能性に収束する②

続き

■不要なほうを削除! どう決まるのか?

両方の性の素地を備えた状態を略図にすると、下のようになる。略図は、受精後6週目ごろをモデルにしているが、このころまでは男女両性の素地を備えている。

では、どのようにして分化していくのか、まずは女性の場合から見てみよう。
原始生殖細胞は卵細胞の祖先型である卵祖細胞に向けて発達し、それに呼応して生殖堤の組織(未分化性腺)は卵巣に向けて発展するようになる。
この時その導管であるミュラー管は、まわりに平滑筋などを巻き付けて、卵管、子宮へと発展する。ミュラー管の発達には、女性ホルモンであるエストロゲンの作用を受けて行われる。
一方、腎臓は後腎という組織から新たに生まれてくるので、中腎は中腎管ともども退化的な組織で、特別な手立てを求めることなく消滅していくので、胚子がそのまま素直に発達していくだけで、女性の生殖器官が生まれてくる。

コンピューターの用語に、「なんの設定変更も実行せずにそのまま」を意味するデフォルト(default)というものがあるが、女性の生殖器官の発生にはこの言葉が当てはまる。


■男性になる場合は、ちょっとやっかい

ところが、その個体がY染色体を持っていて、遺伝的に男性であるならば、話は少しややこしくなる。
Y染色体の上にはSRYという男性を作る遺伝子が乗っていて、そのSRY遺伝子の作用を受けたSox9遺伝子によって、生殖堤の中にある原始生殖細胞は精子を生みだす細胞の祖先型である精祖細胞へと分化し、それにあわせて、未分化性腺は精巣に向けて発達していくのである。
その途上で、精巣の中にホルモンやホルモン様物質を産生する2種の細胞が生まれていくる。1つは男性ホルモンであるテストステロンをだす間細胞で、もう一方はミュラー管抑制因子をだすセルトリ細胞である。
ミュラー管抑制因子は、その名のとおりミュラー管の発達を阻害するので、女性の器官である卵管や子宮のもととなるミュラー管は消滅していく。
一方、強力な男性ホルモンとして知られるテストステロンの作用によって、退化傾向にあった中腎管は勢いを盛り返しすばかりか、滅びる運命にある中腎には見切りをつけて、そばにある精巣に近づき、精巣の導管(精管や精巣上体管)へとなっていく。

この後、後体壁の前にできた精巣は、鼠径部にある陰嚢に向けて降下していくという、次のステージに移る。
間細胞は、成体になっても精巣中でテストステロンを分泌し、思春期の第二次性徴のころには男性らしいからだつきをつくるという大きな役割を果たす。また、ミュラー管抑制因子をだすセルトリ細胞は、精巣の精細管の壁にあって、この壁を保持するとともに、精子の形成場所を提供する。


■で、男性は進化形なの?

このように男性に進む個体は、手を加えなければ女性の器官になるものを、強制的にワンランク上に進める手立てを使って男性の器官を生みだしてきたとみることができる。
だから、この点だけを見ていれば、男性の方が女性よりも一段発展しているようにも見える。
しかし、女性では、Wnt4という卵巣を決定する働きを持つ遺伝子が作動して、その効果により未分化性腺から卵巣に向けた分化が進行する一方、Wnt4の調節を受けて作用するDAX1遺伝子にはSox9遺伝子を阻害する効果があるとされている。
つまり、女性も「男性にはならずに女性になるのだ」という強い意志のもとに発生が進行しているため、単純に女性がデフォルトで、男性が女性の発展型とはいえなようだ。

(以上)

 

 

たかじん

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