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2019年12月27日 (金)

猫の気持ち~人間の間違った研究で猫の居場所が失われる!?~

「猫がすり寄ってきても愛情を示しているわけではない」「猫は人間に無関心」など、猫の行動に関してはさまざまな解釈が行われていますが、実際のところ、猫は自己中心的で人間に愛情を示すことがない生き物なのか?という点を、ウェブマガジンのPopular Scienceが猫や犬について研究を行うJohn Bradshaw氏にインタビューしています。


◆猫は「べったりした愛」ではない
ロンドン大学のDaniel Mills氏らが行った研究で「猫は不慣れな状況に置かれた時、指図を求めて人間を見ることがない」という内容が発表されました。子どもや犬は未知の環境に置かれた時、飼い主や親の方に走っていくため、猫の行動は犬や子どもと異なり信頼を示していないようにも見えます。また別の研究では、20匹の猫を集めて、飼い主と飼い主以外の2人の他人がそれぞれの猫の名前を呼ぶ声を聞かせたところ、いずれの猫も耳の動きなどから飼い主の声を聞き分けていることはわかったのですが、鳴き声を上げたりスピーカーに近づいた猫は1匹もいなかったとのこと。

これらの研究結果から、「猫は飼い主に対して無関心である」と結論づける人も存在しますが、Bradshaw氏は「これらの研究をもって『猫が飼い主に対する愛情を持っていない』とすることはできない」と説明しています。猫と犬では進化の過程に違いがあり、犬は人間に依存するような形で進化してきましたが、猫はそうではありません。そのため、非日常的な状況に置かれた時でも「人に頼る」のではなく、「自分の頭で考える」傾向にあるとのこと。

「パーティーの間ずっと手をつないで互いとしかしゃべらないカップルが愛情深く、パーティーに到着すると別々に行動して新しい友人を作るカップルには愛がない」とは言えないように、未知の状況で人間の方に駆けていかなかったからといって愛がないわけではないのです。

◆猫は飼い主に対して愛情を示している
野良猫が自分のテリトリーであることを示すために木に体をこすりつけるマーキング行動を例に挙げ、「人が猫のいる部屋に入ってきた時に猫が人の足に体をこすりつけるのは、愛情表現ではなくマーキングである」とBradshaw氏は述べています。つまり、上記のような猫の行動は、犬が自分のテリトリーにおしっこする行動と同じであるというわけです。

しかし、Bradshaw氏によると、猫が飼い主の足に体をこすりつける行動は必ずしもマーキングであるわけではなく、しっぽを上げて体の片側を他の猫や人にこすりつけている時は「社会的活動」であるとのこと。しっぽを上げる行動は好意の表れであり、体の側面には臭腺がないので、マーキング行動とは異なるというわけです。

また、2013年の研究で、猫が過度になでられた時にストレスホルモンを放出するということが発表され、「猫は人間になでられるのを嫌う」と解釈されたことがありました。しかしBradshaw氏はこの研究がブラジルで行われたという点を指摘。ブラジルには「飼い猫」があまり多くなく、人々は猫の扱いに慣れていないため、まるで犬をかわいがるようにして猫を扱うとのこと。普段の生活でなでられること自体に嫌気を感じていたため、研究で集められた猫は拒否感を示したのだろう、とBradshaw氏は推測しています。

◆猫は環境を破壊しない


たとえ満腹でも、猫が小動物に対して攻撃を行い、その土地の環境を破壊する、という点も猫嫌いの人が主張するところ。しかし、猫は親から狩りの方法を学ぶため、親と離されて育った飼い猫は小動物と距離を詰めて殺す方法を知らず、環境を破壊することもない、とBradshaw氏は述べています。本来、猫は生まれてから8週間の間に狩りの方法を身につけますが、飼い猫がこの期間に行うのは「コットンボールを転がす」というような遊びです。もちろん、記憶の奥深くに狩りの本能は備わっていますが、猫は本来すぐれたハンターではないので、害獣の多い農場で育ったり、飼い主が狩りの方法を教えない限り、訓練無しで飼い猫が環境を破壊することはないそうです。

◆確かに猫は人を「狂わせる」

Stromberg氏は「猫はあなたを狂わせる」と主張しましたが、確かにこれは事実。恒温動物に寄生するトキソプラズマという原生生物はネズミなどの脳内に入り込むと、行動をのっとり、本来なら捕食者である生物を前にしても怖がらないように操作します。このトキソプラズマは猫用トイレなどを通じて人間に感染することもあるとのこと。

通常はトキソプラズマが体内に入っても免疫系が反応するため大きな問題となりませんが、研究者の中には「人間がトキソプラズマに感染すると、マインドコントロールのような形で思考が変化する」と考えている人も。過去にはトキソプラズマに寄生されることで、自分の評判に対して懐疑的で内向的な性格に変化した男性や、反対に寄生されることで外向的で人を信じやすくなった女性などが報告されています。

もちろん「トキソプラズマが人の思考を奪う」という説には反対する研究者も多く存在しますが、少なくともトキソプラズマは免疫不全の状態で感染すると致死的な状態を引き起こす可能性もあるため、Stromberg氏の主張する「猫は人を狂わせる」という説はある意味では間違っていないわけです。

 

 

 

道民

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