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2019年12月25日 (水)

冬眠という奇跡

リンク より引用

(前略)

冬眠の最大のナゾは、どのようなメカニズムで低体温が生じるのか、そしてナゼ低体温でも生きながらえることができるのか、の2点である。先に紹介した近藤博士らはこの2つのナゾをかなりの部分まで解き明かしたのである。

ブレイクスルーはまず低体温でも生きながらえるメカニズムに関する研究で起こった。やや難しくなるが、生存に最も重要な心臓を例にとって解説しよう。血液を循環させるには心筋の収縮と弛緩(心拍)が繰り返される必要があるが、そのスイッチの役割を果たすのが細胞内のCaイオン濃度である。心筋はCaイオンの濃度が高くなると収縮し、下がると弛緩する。ふだんは細胞膜上にあるCaイオンの通り道(Caチャンネル)が頻繁に開閉することで、心臓の心拍をきちんと保っている。しかし、人の場合、低体温になるとこのチャンネルの開閉が遅くなり、心筋細胞内にCaイオンが蓄積して心臓が停止してしまう。これが低体温による直接的な死因となる。

ところが、冬眠動物では低体温に陥るとまずCaチャンネルを閉じてCaイオンの過剰流入による心筋のダメージを防止する機構が働く。それだけでは心拍も止まってしまうが、代わりに細胞内の器官である小胞体がCaイオンを積極的に出し入れして心筋細胞内のCa濃度を変化させ、心拍が途絶えないようにサポートする。すなわち低体温になると小胞体がCaチャンネルの肩代わりをするようになるのである。

小胞体は普段からたんぱく質の合成やCaイオンの貯蔵を行っているが、冬眠中にそのパワーが全開、いや大幅に増強されるのだ。このようなバックアップ機能は冬眠しない動物では備わっていない。心筋以外の組織ではどのような低温対策がとられているのか不明な点も多いが、冬眠中でも筋肉量が維持され、免疫能が低下しないなど身体機能は傷害されずに保たれているから実に不思議である。

次に、冬季に体温が自動的に低下するメカニズムが明らかになった。近藤博士らは心筋の研究に引き続いて、冬眠を引き起こす特殊なたんぱく質(HP:
hibernation-specific
protein)をも見いだした。膨大な生体物質の中からこのような特殊な機能を持つたんぱく質を探し出すのは至難の業だが、自らが発見した心筋の機能変化を指標にして、効率的に生体物質をスクリーニングできたのが勝因である。HPは現在までに冬眠との関連がはっきりと証明されている唯一の物質である。

不思議なことに、血中のHP濃度は夏場に高く冬場に低い。冬眠を引き起こす物質ならば冬場に増加しても良さそうなものである。あまりにも専門的になるので詳細は省くが、実は冬には血液中から脳内に移行して体温中枢に作用して低体温を引き起こしていたのである。実際、特殊な方法で脳内のHPを働かないようにすると冬場でも冬眠が生じなくなる。

冬眠現象がHPだけで生じているのかまだ明らかになっていない。冬眠動物に特異的に認められる生体物質や、体内で濃度が季節変動する物質は他にも数多くあり、それらの一部が冬眠に関わっている可能性もあるだろう。しかし近藤博士らが発見したHPが非常に重要な役割を担っていることは間違いないと考えられている。
(後略)
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引用おわり

 

 

 

橋口健一

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