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2020年3月25日 (水)

ウイルス起源の三つの仮説~2.ウイルスは細胞から逃げ出した遺伝子 /3.ウイルスは細胞が退化したもの


二つ目と三つ目の仮説は、一つ目の仮説とは逆に「ウイルスより先に細胞があった」と考える仮説。

(以下、『ウイルスの意味論』(内山一也著)より要点整理)
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2.ウイルスは細胞から逃げ出した遺伝子

1950年代にある種のファージが細菌の染色体に組み込まれ潜伏していることが発見され、「ファージになる前の姿」という意味でプロファージとよ呼ばれる。潜伏中のプロファージは、宿主のDNAの文字列に過ぎないが、細胞に紫外線をあてると、活性化されて細菌を溶かし、子ファージが放出される。
 また、RNAウイルスの場合、例えばニワトリ白血病ウイルスでは、ウイルスのRNAがDNAに逆転写され、ニワトリの染色体に取り込まれている事が見つかっている。

ただの文字列が、ウイルスになって細胞を飛び出すことがありうる。これらの成果から、「ウイルスは細菌又は真核生物の細胞の遺伝子が逃げ出して、タンパク質の殻(カプシド)を作る遺伝子と遭遇して感染するようになったもの」とする仮説が生まれた。

一方、1970年代以降、マウス白血病ウイルスから細胞の遺伝子由来の腫瘍遺伝子が相次いで見つかった。ウイルスRNAが細胞DNAに逆転写されて、細胞のゲノムに組み込まれ、ウイルスが活性化して放出される際に細胞の遺伝子を盗み出したと考えられた。これらの発見を踏まえ、最近では当初の「細胞から逃げ出した(逃亡説)」という考え方は、「すでに生まれていたウイルスが進化の過程で細胞の遺伝子を盗み続けている」という考え方(泥棒説)に変わってきている。

3.ウイルスは細胞が退化したもの

実際に機能を失いつつある生物が見つかっている。クラミジアと呼ばれる微生物は、一般的な細胞より小さく、人工培地では増殖できず、細胞内で初めて増殖するため、細菌が退化したものと考えられている。れっきとした細菌だが、ウイルスと良く似たライフサイクルを持つ。また、これもウイルスでは無いが、ミトコンドリアは、細菌が細胞に入り込んで退化したとかんがえられている。このほか、細胞が退化してウイルスになるまでの中間の存在は見つかっておらず、退化説は長い間で見捨てられていた。

ところが2003年にミミウイルスが発見されてから、退化説が再び脚光を浴びている。それに続き発見された多くの巨大ウイルスは、粒子のサイズが小型の細菌より大きく、しかもゲノムには、タンパク質合成に関わる遺伝子などの細胞由来と考えられる遺伝子が含まれている。

これらの遺伝子で系統樹を作ると、真核生物が登場した時代に巨大ウイルスの祖先の存在が推定されたが、真正細菌、古細菌、真核生物の三つのドメインのいずれにも該当しなかった。そのため、巨大ウイルスの祖先はすでに絶滅した「第四のドメイン」に属し、進化の過程で大部分の細胞因子が失われて巨大ウイルスになったと考えられている。

 

 
斎藤幸雄
 

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